Lesson13 : 小児慢性特定疾患とは
13-1 小児慢性特定疾患
小児慢性特定疾患治療研究事業は、児童福祉法第21条の5に基づき、子どもの慢性疾患のうち、国が指定した疾患(11疾患群:約510疾患)の診療にかかる費用等を行政が公費で負担する制度です。
11疾患群(514疾患) | 入通院別 | |
---|---|---|
入院 | 通院 | |
悪性新生物(白血病、脳腫瘍、神経芽腫 など) | ○ |
○ |
慢性腎疾患(ネフローゼ症候群、水腎症 など) | ○ |
○ |
慢性呼吸器疾患(気管支喘息、気管支拡張症 など) | ○ |
○ |
慢性心疾患(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症 など) | ○ |
○ |
内分泌疾患(成長ホルモン分泌不全性低身長症 など) | ○ |
○ |
膠原病(若年性関節リウマチ、川崎病 など) | ○ |
○ |
糖尿病(1型糖尿病、2型糖尿病、その他の糖尿病) | ○ |
○ |
先天性代謝異常(糖原病、ウィルソン病 など) | ○ |
○ |
血友病等血液・免疫疾患(血友病A、好中球減少症 など) | ○ |
○ |
神経・筋疾患(ウエスト症候群、無痛無汗症 など) | ○ |
○ |
慢性消化器疾患(胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症 など) | ○ |
○ |
(注)「児童福祉法第21条の9の6の規定に基づき厚生労働大臣が定める慢性疾患及び当該疾患ごとに厚生労働大臣が定める疾患の程度(平成17年厚生労働省告示第23号)」により一定の基準を設けております。 |
上記のなかで、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)は「内分泌疾患」に分類される疾患として、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患の認定を受けています。18歳未満(申請すれば20歳未満)までは、保険診療の自己負担分の助成を受けることができます。
13-2 申請と自己負担額
所得の状況に応じて、以下の自己負担が生じます。
階層区分 | 自己負担限度額(月額) | |
---|---|---|
入院 | 外来 | |
生活保護法の被保護世帯 | 0円 | 0円 |
市町村民税が非課税の場合 | 0円 | 0円 |
前年の所得税が非課税の場合 | 2,200円 | 1,100円 |
前年の所得税課税年額が10,000円以下 | 3,400円 | 1,700円 |
前年の所得税課税年額が10,001円〜30,000円 | 4,200円 | 2,100円 |
前年の所得税課税年額が30,001円〜80,000円 | 5,500円 | 2,750円 |
前年の所得税課税年額が80,001円〜140,000円 | 9,300円 | 4,650円 |
前年の所得税課税年額が140,001円以上 | 11,500円 | 5,750円 |
(注)重症患者に認定された方の自己負担はありません。 |
実施主体である都道府県および指定都市(人口50万以上で「地方自治法第252条の19第1項の指定都市の指定に関する政令」で指定された都市)、中核市(人口30万以上で「地方自治法第252条の22第1項の中核市の指定に関する政令」で指定された都市)によって申請の方法がいくらか違いますが、申請をする時に必要な主な書類は以下の通りです。詳しいことは、主治医やお近くの保健所に問い合わせましょう。
【小児慢性特定疾患の申請に必要な書類】
(1) 交付申請書
(2) 医療意見書
(3) 児童の属する世帯の住民票又は世帯構成が確認できる健康保険証の写し
(4) 保護者等児童の生計を主として維持する者の所得の等に関する状況を確認することができる書類の写し
13-3 小児慢性特定疾患は大人になると?
クレチン症の場合、20歳になると小児慢性特定疾患治療研究事業の制度が適用されなくなるので、自己負担分を支払わなければなりません。
現在のように、国や地方自治体の財政が厳しい状態が続けば小児慢性特定疾患治療研究事業の制度も、見直しが行われ、補助が受けられる基準が変わっていく可能性もあります。
クレチン症は、生涯を通じて治療しなくてはならないケースが多く、この場合、成人になったからといって治療を中止することはありません。大人で小児慢性特定疾患治療研究事業に相当するものは、難治性疾患克服研究事業(特定疾患調査研究分野)で123疾患が対象となり、その中で医療費の補助対象としては特定疾患治療研究事業により45疾患が指定されています(難病情報センターのホームページより)。橋本病という後天性甲状腺機能低下症は、例えば北海道では地方自治体が指定する特定疾患として生涯にわたる補助が受けられていましたが、財政悪化に伴い指定の見直しが行われ、2005年(平成17年)9月30日で対象からはずされています。
生まれつき甲状腺機能に異常があるクレチン症が大人になると補助が受けられなくなるというのは不自然な話ですが、社会的状況や病気の重症度、医療費の負担の程度により公的な支援に差があるのは、現在の医療制度の中ではいたしかたのないことかもしれません。ただし、別記する生命保険加入の際の条件付けといった、ある種の社会的差別ともいえる状況の改善は今後も必要といえます。