クレチン症講座ー上級編

Lesson21 : 保険の加入について

21-1 先天性疾患をもつ子どもの保険加入

先天性疾患をもつお子さんが保険加入できなかった例や、病気を告知せず加入し、他の病気にかかった際に既往症に先天性疾患の記載があったため「虚偽加入]として保険の解約をされた例などがありました。
クレチン症の場合は、検査・服薬により健康なお子さんと同じ生活を送ることができ、しかも合併症の心配もありません。このようなことから、マスコミに取り上げられるなど、社会的にも保険加入の可否をめぐる判断基準の見直しを求める動きが出て、厚生労働省の聞き取り調査なども行われました。
そうした様々な働きかけの結果、国内でごく一般的な保険である日本郵政公社の簡易保険の場合、申し込み時の告知内容により健康状態に問題がないことが確認できれば、保険加入ができることとなりました(2003(平成15)年3月25日付(同年4月1日より実施))。

【日本郵政公社の簡易保険(かんぽ)加入の条件】
先天性甲状腺機能低下症、PKU、ガラクトース血症、先天性副腎過形成の4症に対する保険加入機会拡大の条件。
  • 生後1歳を経過していること
  • 生後早期に疾患を発見・治療を開始し、申込みの時点も治療を継続していること
  • 合併症もなく症状が安定し、通常の生活を送っておられること
(なお、ご加入できる保険種類は、当面、加入ニーズの高い学資保険、育英年金付学資保険及び22歳までに満期となる養老保険に限定)

詳しくは日本郵政公社の簡易保険契約への「加入の機会拡大について」をご覧ください。


最近の情報:日本郵政公社は、2007(平成19)年10月1日より民営化され日本郵政グループとなり、従来の保険業務は株式会社かんぽ生命保険に引き継がれています。新会社の保険商品はこれまでの簡易保険と商品名は同じですが、まったく別のものとして扱われることになります。日本郵政公社時の上記のホームページ上の報道発表は削除されていますが、2007年11月現在(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学の新宅治夫准教授の)書簡による問い合わせに対して、「先の発表内容(平成15年3月25日付け)と同じ考え方に基づき契約締結の可否を日本郵政公社時と同じ考え方により判断」しているとの回答が得られています。


21-2 先天性疾患をもつ子どもの保険加入の実状

実際の保険加入状況については、クレチン症と同じく新生児マススクリーニングで早期発見・早期治療されている病気であるフェニルケトン尿症(phenylketonuria、PKU)のお子さんについて調査されています。その結果については「フェニルケトン尿症親の会連絡協議会ホームページ」から資料をみることができます(http://www.japan-pku.net/pdf/akt.pdf)。