クレチン症講座ー上級編

Lesson24 : 病型診断について

24-1 病型診断について

新生児マススクリーニングで「クレチン症の疑い」といわれた場合、甲状腺機能低下症の程度が著しい場合や、甲状腺機能低下症の程度が軽度であっても潜在性甲状腺機能低下症[甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値だけが軽度上昇し、甲状腺ホルモン値(FT3,FT4)が正常範囲の場合]が持続した場合は、甲状腺機能低下症の原因を調べるより、甲状腺機能低下症そのものの治療が優先されます。

ひとたび、甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)の服薬による治療が始められた場合、はっきりと一過性甲状腺機能低下症が疑われる以外は、3歳過ぎまで治療を継続し、その後、甲状腺機能を「再評価」(re-evaluation)することが必要です。

:「再評価」の詳しいやり方は、Lesson17「潜在性甲状腺機能低下症(軽症クレチン症)」の項目を参照してください。

「一過性甲状腺機能低下症」か「永続性のクレチン症」かの区別は3歳頃でもできますが、クレチン症の病因(原因)を詳しく調べるための時期としては、5~6歳頃の小学校入学前が適当と考えられています。この時は、普通、入院して「病型診断」と呼ばれる検査を行います。

「病型診断」の詳しいやり方は、Lesson25で説明します。

24-2 病型診断の後のこと

「病型診断」により永続性の甲状腺機能低下症と判明した場合は、身長の伸びが止まる思春期の終わる時期(男の子は17歳、女の子は14歳ころ)まで、きちんと甲状腺ホルモン薬補充療法を継続します。甲状腺機能検査のための採血は、年に1、2回となります。

「病型診断」により、甲状腺機能が正常であると判明した場合は、治療を中断し、まず1か月後に甲状腺機能検査を行います。その時点で甲状腺機能が正常(TSHが4mIU/L未満)であれば、次は3か月後に甲状腺機能検査を行い、正常が続いていれば、その後は年に1、2回の甲状腺機能検査と身長・体重、骨年齢、二次性徴の発現を思春期が終わるまで、注意深く経過観察していくことになります。
注意すべきこととしては、甲状腺が腫れてこないかに気をつけるとよいでしょう。